——『柳原くんはセックス依存症。』インパクトの強い題材ですが、描き始めるときどう思いましたか?
大丈夫かなという不安はありました。
もっと大人しい題材の方がいいのではとも思いましたが、これはこれで目に留まっていいんじゃないかと考えました。
一種の挑戦だなと。結果的にも目立つことができてよかったです。
——広樹の「セックス依存症」を描くにあたって、難しかったことはありますか?
どこまで表現していいのか、ここまで描いていいのか、というのが難しかったです。
世間にこの病気に対する固定観念もあると思いますし、漫画としてどう表現するべきか迷いました。
——広樹とは対照的な、志帆の「男性恐怖症」を描くにあたっては、いかがでしょうか?
読者さんが感情移入できるように意識しました。
セクハラは、多くの女性が多かれ少なかれ経験したことがあるものだと思うので。ただ、そっちに力を入れすぎると暗い話になってしまうので、バランスを取るのが難しいですね。
暗くしたくもないけど、軽くも描きたくない。読むときにつらくならないようにしたいと思っています。
——読み手の感覚に寄り添いながら描いてらっしゃるんですね…!具体的に、ここは気を遣ったというシーンはありますか?
最初に広樹が志帆に触れるシーンは気を遣って描きました。
唇に触れるところですね。2人の初めての接触だから、綺麗にしたいなと思いました。美しい印象のコマを作りたいなと。
でも、今だったらもうちょっとエロく描くかな…。
——(単行本を見返しながら)これでもかなりエロいと思いましたが…!
少しずつ触れていく描写が本当に綺麗なシーンだと思います。
他に単行本の内容で思い入れのある箇所はありますか?
見返すと、昔と今で色々違いますね…。
頑張って描いた分、広樹の目は思い入れがあります。昔の目は、色っぽくて、危ない感じ。今はかわいい感じですが。
高校生だし、変わっていくのも良いと思っています。そろそろ大人しくなるのかな(笑)
——まだ大人しくなってもらっては困ります!(笑)
これからも年下男子らしく攻めてほしいです…!個人的には、各話のラストで広樹が放つセリフが印象的だなと思っています。
「好きです」や「結婚しましょうか」など…。
そうですね、年下は、まっすぐさが魅力ですよね。
私、年下に幻想があって(笑)大人になると用心深く色々考えちゃうじゃないですか。年上が色々考えてることをふっとばす力が、若い子にはあるなと。一言でいうと、「ケセラセラ」って感じですかね。大人から見ると高校生の悩みがなんてことなく思えるように、高校生から見たら大人の悩みなんて大したことじゃなく思える。
だから、広樹と志帆が、お互いに悩みを解消できる仲間になれたらいいなと思うんです。
——広樹がいるから志帆は前に進めるんですよね。広樹を描くときのポイントはありますか?
広樹を描くのは一番難しいです。
今でも描き慣れなくて。髪型が特に…。自分でデザインしたんですけど…!広樹は、格好良い高校生を描きたい一心でデザインしました。目と髪は、個性を出したくて特に気を付けています。中身の面では、広樹のキャラは乙女ゲームも参考にしています。例えばA3!とか。
格好良いキャラとは…ってすごく難しいです。私の中にあるものだけで考えると、つい暗いキャラになっちゃうので。
——逆に、描きやすいキャラはいるでしょうか?
西川先生は描きやすいです。
誠実で優しい人なので、西川先生が出てくるとシーンがほわほわします。最近は西川先生のシーンも緊張感がありますが…。元々は、こんな複雑な関係にはせず爽やかな脇役として終わる予定でした。
西川先生には、私が学生時代に出会った、数少ない優しい先生の良いところを集めています。広樹との面談のシーンなんかがそうですね。
——数少ない…と仰いましたが、厳しい先生が多かったんですか?
そうですね(笑)作中の生徒のように、先生と友達のような感覚ではなかったです。私がかなり真面目な生徒だったということもあり…。
——志帆に近い性格でしょうか?
確かに、真面目なところは志帆と似ているかもしれません。
先生って、苦労した生徒ほど記憶に残るって言うじゃないですか。あれずるいなって思います(笑)手間をかける時間で、その生徒と深い話もできますからね。
——なるほど…。お話を聞いていると、「先生」という職業について、すごく掘り下げて考えてらっしゃる印象です。
先生としての経験がないので、そこは志帆を描くときに難しいところです。
ネットで先生に関する話を探したり…。あと、保健の先生が着そうな服も探したりしています。実は一度だけ修学旅行の手伝いに入ったことがあるのですが、その経験は志帆の仕事に近かったですね。
韓国から京都に来た修学旅行生の通訳だったのですが、実際には通訳だけでなく、体の弱い子の手伝いをしたりもしました。
——実体験の部分とリサーチの部分と、両方から作られているんですね。今後描いてみたいエピソードはありますか?
志帆が制服を着るシーンは絶対描きたいです!広樹にも大人の格好をさせたいですね。
——志帆が制服…アラサーですよね?26歳くらい?リアルに考えるとヤバくなりそうな…。
ヤバさが良いんです(笑)背徳感があって。
20歳とか21歳なら、なんとか制服着れちゃうじゃないですか。だから26歳が着たら特別なんです。
——言われてみると確かに…。
広樹が大人になりたい分、志帆も学生に帰りたいと思うんですよね。
私なんて、年下と付き合ってないのに帰りたいです(笑)大学3年のときが特に楽しかったですね…。お酒飲む量も把握してるし、二日酔いもしないし、体力あるし、徹夜できたし。
今は徹夜できないので原稿は計画的に描きますし、自分の体を信じてないです…。自分の限界を知るのが大人になることだと思います。
今の広樹は、自分が全部できると思ってる。そう考えると広樹も私に似てますね。お酒を飲んでた時代の(笑)
——そういった年下・年上あるあるは、作品を読んでいても共感しやすいポイントですね…!
それでは、最後に読者さんにメッセージをお願いいたします。
色々足りない部分もある作品なのですが…見ごたえある作品にするためにがんばってます…!
読んでくださって本当に本当にありがとうございます。ありきたりのことしか言えないのですが、漫画って、読んでくださる人がいてこそなので。これからもよろしくお願いします!
キャラクターの年齢へのこだわりが光った今回のインタビュー。
志帆が制服を着る展開は本当に来るのでしょうか…!今後の連載からも目が離せません…!
キャノーラ先生、貴重なお話ありがとうございました!