「夫婦未満」

森　聡美は付き合って5年になる彼氏の池田　豊と2年の同棲をしています。5年も付き合うと記念日の特別感もなくなってはきますが、豊との関係は良好でした。しかしお互い28歳。そろそろ結婚を視野に入れてもよいのではないかと聡美は考えますが、豊からは未だに結婚の話はありません。

世間的には晩婚、晩産もめずらしくないとはいえ、聡美としてはそんな「夫婦未満」な関係からは抜け出したいと思うのでした。

ある日、豊は大学生時代の友人との飲み会に友達が聡美と飲みたがっていると言って、聡美を誘います。聡美は仕事終わりに向かうことを了承し仕事に向かいますが、その時も豊が結婚に踏み切ることのできない原因は何なのかと考えるのでした。

結婚の話になると豊は…

残業が長引いてしまった聡美は、遅れて飲み会に参加することになりました。聡美が到着するころには豊とその友人達は既に3杯は飲んでいて、ほろ酔い状態です。

そんな中、1人の友人が「おまえいつ聡美さんと結婚すんの？」とヘラヘラしながら豊に問いかけます。すると豊の表情がピシッと固まりました。豊と聡美の仲は周囲から見れば同棲をした段階で、結婚は秒読みでいつになったら招待状が来るのかと考えてしまうくらいでした。

「うじうじ悩んで待たせるのって残酷だぜ？」とその友人は続けます。そこで豊は、「はは、そうだよな…　まあ考えてるって」と目をそらし躊躇うようにして話したのです。

豊の友人に「だってよ　聡美さん！どうですか！」と聡美は聞かれます。豊のそんな表情を見てしまった聡美ですが、「えっと…じゃあ期待しちゃおうかな～！」ととりあえず答えます。

その後会話は豊の性格の話から友人達の昔話と移っていき、話についていけない聡美はアウェイになってしまいます。豊も結婚の話が逸れた途端イキイキと話しだし、結婚のことについてどう考えているかはわからないままなのでした。

本当は気にしてほしいけど

会話の蚊帳の外になってしまった聡美はトイレへ向かうことにしました。しかし混んでいたため、少し待つことにします。トイレの前で待っていると豊が「悪いな…あいつらうるさくって」と聡美の元へやって来ました。

しかし、会話は特になく気まずい空気が流れます。聡美は「さっきみたいなこと言われても気にしなくても大丈夫だから」と言い、落ち着かない様子で空いたトイレに入ります。

聡美の本心としては気にしてほしいとおもっているのですが、先程の豊の表情が頭から離れず何も言えないままなのでした。

ユカリとの再会

聡美がトイレから戻ると豊の友人が電話をしていて、何やらもう1人この飲み会にやってくるというのです。そこへ「遅くなってごめんね～」とやってきたのは北本　ユカリでした。

ユカリが来た途端、豊の目の色が変わります。「ひ、久しぶり」と聡美の紹介もせずそわそわと言います。聡美がねぇと促すと思い出したかのようにユカリへ聡美を紹介しました。

豊が旦那の転勤でこっちに戻ってきたのかと聞くとユカリはもう離婚をしたというのです。ユカリのことがバツイチだと分かった豊は何かを思うように「離婚…」とつぶやくのでした。

変わったのは私への態度だけ…

数日後、豊にお昼何が食べたいか尋ねても、ぽけ～っと上の空です。あの飲み会以来、セックスもしておらず、聡美は妙に避けられているように感じます。

浮気を疑って豊のスマホを確認してみますが、ロックもされておらず毎日定時で帰ってくることに関してはいつもと変わっていませんでした。

変わってしまったのは、聡美への態度だけだったのです…

聡美と結婚できない…！その理由は？…

豊との距離に違和感を覚えながらも年末を迎え、母に実家へ帰ることを伝えた聡美は母からも結婚はしないのかと問われます。そして豊も実家へ誘ってはどうかと言うので、豊に聞いてみることにしました。

聡美は「正月に彼女の実家に行くなんてハードル高いよね」と冗談交じりで豊に話しかけます。しかし豊は黙り込んだままです。

ユカリは今聞いても欲しい答えがもらえないと思い、お正月の件を無かったことにしようとします。すると豊は突然口を開きこう言いました。「聡美　…ごめん俺はいけない　聡美と結婚できない…！」と。

聡美は表情が固まってしまいますが、内心はやはりとおもいながら浮気をしていたのか尋ねます。しかし浮気をしてはいないというのです。そして豊は、

「俺…ユカリを諦められないんだ！！」

と聡美へ告げるのでした。