魔王に憧れた男

同世代の子供達がゲームで盛り上がるなか、1人離れてゲーム画面を見つめる子供がいました。彼の名前は牛頭。牛頭は誰からも愛されず、世界を恨み、自分のためだけに孤高に戦うゲームの魔王に強い憧れを抱いていました。

大人になりヤクザとなった牛頭は、抗争中に銃で撃たれてしまいます。牛頭は魔王のように高笑いをしながら、その生涯に幕を閉じたかにみえたのですが…。

ゲーム世界に転生！？

牛頭は先ほどまでいた部屋とは別の部屋で目を覚ましました。「俺は死んだはずじゃ…」着ている服が変わっていて、銃で撃たれた傷もないことに、牛頭は不思議に思います。

「まったく何をぼーっとしている。今日は計画実行の日だ」牛頭の目の前にいた中年男性が話しかけてきました。「息子を…イブロギアを殺せ」中年男性の口から出たのは、牛頭が子供時代に憧れたゲームの魔王の名前でした。牛頭は中年男性に「オッサンども誰？何？オタク？これコスプレの夢？」と問いかけます。

魔王イブロギアと暗殺者

その時、牛頭の後ろの扉が開かれ、イブと呼ばれるかわいらしい少年が姿を現しました。牛頭はイブの姿を見た途端、イブのもとに駆け寄って「イブ！！魔王イブロギアのガキの頃だ！」と興奮気味に話します。しかし、イブはいきなり近づいてきた牛頭に驚き、魔法の力を暴走させてしまいました。

魔法の力で牛頭は手にケガを負ってしまいます。「ごめんなさい、びっくりして…ごめんなさい…」イブは牛頭に申し訳なさそうに謝りました。

それを見たイブの父親は、「今日からお前のその強すぎる魔力を見張り、護衛してくれる男だ」とイブに牛頭を紹介します。牛頭はゲームで覚えのあるセリフと見覚えがある場面に出くわして、自分のポジションが魔王イブロギアを殺す暗殺者だと気づくのでした。

ここであなたに殺されるんですか？

イブと牛頭は、イブの両親に頼まれて2人で外に買い物にいくことになりました。道中でイブは、自分の境遇を牛頭に話します。イブは強大な力のせいで、いつも叱られ、怖がられていました。そして両親によって、誰にも会わないよう、どこにも行かないように家の隣の小屋に閉じ込められていたのです。

イブは「買い物してこい」なんて今まで一度も言われたことなかったと話し、「…僕はここであなたに殺されるんですか？」と牛頭に聞きます。牛頭が否定をしなかったので、イブは両親が自分を暗殺しようとしていると確信しました。

俺はお前に惚れたんだよ

「僕は誰からも愛されてなんかいないんだから…！」逆上したイブは、魔法を牛頭に向かって撃ち放ちました。魔法は牛頭に直撃しますが、牛頭は笑い始めます。「あつい！苦しい…！面白ぇ！」牛頭はゲームでイブロギアが暗殺者を返り討ちにした場面が再現されて、イブがゲームのラスボスのイブロギアだと確信しました。

牛頭はイブと出会えたことを喜び、「その歳！そのナリで！1人でよく世界を敵に回そうとしたもんだ！すげえよ！最高だ！だから俺はお前に惚れたんだよ」と心中をぶちまけます。「…っほ…ッ惚れ…ッ！？」告白されたイブは顔を真っ赤にして、動揺してしまいました。

世界をぶっ壊してみせてくれ

牛頭はイブを後ろに下がらせて、隠れていた暗殺者を蹴散らします。そして、牛頭はイブに「今度こそ、世界をぶっ壊してみせてくれ」と言います。「そのつもりで…あなたに魔法使ったんですけど…」イブは牛頭に魅了の魔法をかけていました。

ゲームでは、牛頭は操られて暗殺者と同士討ちになるはずでした。「…あれ…？なんで俺生きて…」そう言いかけて、牛頭はイブに向かって倒れてしまいます。牛頭はイブに受け止められ、イブの胸の中で苦しそうに悶えるのでした…。