特別な女の子

私立藤華女学校に通う中学2年生の久宮秋子。引っ込み思案で冴えない彼女には、気になる女の子が1人いました。それは明るく人気者で、誰とでもすぐ仲良くなれる友人の春樹です。自分とは真逆の性格をしている春樹に惹かれて、秋子は気づけば春樹のことを目で追っていました。

初めての彼女

「春樹ってほんと男子だよね」春樹と一緒に食事をしていた友人達は、春樹がガニ股で椅子に座っていることや、ハスキーな声、名前が男子っぽいと話します。すると春樹は「誰か『俺』と付き合ってよ」と椅子に乗り、男になりきって格好をつけたポーズをとりました。

「出た～～ッ！！春樹の謎イケメン！」「うぜぇ～（笑）」友人達は春樹の行動をからかいます。そんな中、秋子だけは真剣な表情で手を上げて、春樹の彼女になると名乗りを上げました。

「マジで！？うれし～！！」春樹は秋子の手を取って、「本当に！？本当の本当にいいの！？」と秋子に何度も聞きます。秋子は照れながら「よろしくお願いします…っ」と答えました。「かっわいいっ！！」その様子を見て、春樹は秋子に抱きつきます。こうして、秋子と春樹は付き合うことになりました。

自分には厳しい母親

春樹と付き合うようになってからは、秋子は毎日が楽しくてしょうがありませんでした。しかし、秋子は母親との間に問題を抱えていました。母親は秋子に対して理不尽なほど厳しかったのです。

ある日、秋子は春樹と放課後デートをして、門限を30分破ってしまいます。秋子はバレないかと恐る恐る家に帰ると、母親が待ち構えていました。母親に門限を破った理由を聞かれた秋子は、友達と図書館で勉強をしていたと嘘をつきます。

「古い油の臭いがするのだけど、本当に図書館で勉強してきたの…？」秋子の嘘を見破った母親は、秋子の髪を引っ張り床に押し倒しました。「お前！嘘をついたな！？」激怒した母親に、秋子は怯え「ごめんなさい」を繰り返して謝り続けます。

怒りの収まらない母親がスリッパで秋子を叩こうとしたとき、秋子の姉から電話がかかってきました。先ほどまでの怒りはどこにいったのか、電話を取った母親は穏やかな口調で話し始めます。その隙に秋子は自分の部屋に逃げました。理不尽に怒られた秋子でしたが、辛いことがあっても、春樹がいれば幸せだと思い、気持ちを切り替えることができたのです。

「愛してる」本心の言葉じゃなくても

ある日のお昼、秋子は友人達から春樹とのカップルの関係をいつまで続けるのと聞かれます。それに対して「そんなのずっとに決まってんじゃんねー！」と春樹は答えました。

その後、屋上で春樹と2人きりになった秋子は、ずっと一緒にいると言ってくれたことは本当かと春樹に尋ねます。ですが春樹は秋子をからかい、はぐらかして答えてくれません。「こっちは真剣なのにー！！」秋子は春樹に怒って、泣き出してしまいます。

「はぐらかすってことは、そうじゃないのかなって」秋子は涙の理由を語りました。春樹は秋子を抱きしめて、「心配しなくても、ずっと好きだし、ずっと一緒だよ。愛してるからね」と慰めます。

その言葉がその場しのぎのものだったとしても、今まで「愛してる」なんて言われたことのなかった秋子にとってはとても幸せなものでした。その時秋子は、春樹は一生に1人の運命の人であり、自分を救ってくれる神様だと信じて疑わなかったのです。

変わっていく少女の心

帰り道、春樹は髪の毛を伸ばそうかなと秋子に話します。それに対して秋子は、「長くしても春樹ちゃんは絶対―かっこいい！」と話して、「春樹ちゃんは何してもかっこいいっていうか…王子様みたいな！」とのろけます。春樹は笑顔で受け答えますが、何か思うことがあったのか微妙な表情を浮かべていました。

この頃から少しずつ表われた春樹の変化を、秋子は気づけずにいたのでした…。