獣人世界の傀儡の王

肉食獣人や大型の草食獣人が力を持つ獣人世界。ここでは獣人ではない動物や人間は主に食糧、奴隷、ペットとして扱われていました。獣人達の頂点に立つ白いライオンのシアラは、獣人世界の王として君臨していました。

しかし、国の実権は叔父であるコンカドールに握られていて、彼の言葉は王の言葉として伝えられていました。シアラは真の王（白いライオン）という理由だけで生かされていたのです。「自らの意志では何もできず、父が愛した国が穏やかに腐るのを黙って見ているしかない」とシアラは自分の現状を憂えていました。

殺されたペット

最近シアラがペットとして飼っていた動物が、立て続けに毒殺されることが何度も起こっていました。今朝もペットの鳥を殺されますが、シアラは顔色を一つも変えませんでした。侍女達が遺体を片付けようとしますが、シアラは「よい。遺体を置いて下がれ」と侍女達に命じました。

それを耳にしたコンカドールは、自分の息子に商人を手配させたとシアラに話し、「息子と共に次のペットをお選びになってはいかがですか？」と提案をします。シアラは承諾しますが、コンカドールの話を聞いてペットは子息と合わせるための口実にされたと思います。

シアラは庭に行き、殺されたペットを自らの手で埋葬しました。「次は無能な王ではない主人のもとに生まれるといい…」とペットに語りかけたシアラでしたが、思い直し「いや…次は…自由に―」と願うのでした。

人間との出会い

シアラがペットの墓の前で座り込んでいると、そこに人間の男・ランディーニが現れます。「何故ここに人間が…」とシアラが考えていると、ランディーニは手を差し伸べてきました。驚いたシアラはライオンの姿に変身して、ランディーニに襲い掛かります。

シアラはランディーニを押し倒して「貴様、何者だ」と問いかけます。ランディーニは「泣いてるかと思ったんだ」と手を差し伸べた理由を答えました。シアラは呆気にとられて、変身を解いてしまいます。

「何者だ！！そこで何をしている」そこに王宮を警備する兵士達が現れます。兵士達はライオンに変身をして、ランディーニをシアラから引き離しました。吹っ飛ばされたランディーニが兵士達を睨みつけると、兵士達は激昂してランディーニに襲い掛かります。「やめよ！！！そ、その者は私の」シアラは兵士達を止めました。

人間の奴隷は何者？

シアラは咄嗟にランディーニの事を「私のペットだ！！」と言って、ランディーニをかばいました。そして、自分の部屋に置いてあるペット用の檻にランディーニを閉じ込めます。ランディーニを見た侍女達があれやこれやと話すなか、シアラは「見たところ奴隷のようだが、奴隷が何故王宮の庭に？」と考えます。

そこにコンカドールの息子であるノシランと商人が現れます。商人はランディーニのことを見るやいなや、「コイツ！！こんな所に！！下等な人間の分際で逃亡なんかしやがって！！」と大声を出しました。

獣人の王は人間の奴隷に何を思う…

「そういうことか。私が心を痛めていると知って、まさかこのようなサプライズを用意してくれたとは」商人の話を聞いたシアラは、ランディーニはノシランが用意してくれたペットだったのかと話します。ノシランは「それは商人の奴隷…」と否定しようとしますが、シアラに笑顔でお礼を言われたので、ランディーニをプレゼントということにしました。

ノシランや侍女達が部屋から出ていき、シアラとランディーニの2人だけが部屋に残りました。「―なるほど、商人から逃げた奴隷であったか」シアラはランディーニに話しかけて、檻の鍵を使って扉を開けます。そして、シアラはランディーニに「去れ」と告げるのでした…。