俺はたぶん世間的に見たらいい夫

酒は苦手、タバコも女遊びもしないサラリーマンの岩井　聡（いわい　さとし）は、自分のことを「いい夫」だと自負しています。妻の家事が行き届いていなくても目をつぶり、さらには「もっと家事とか手抜いていいんだよ？」と声をかけ、優しくしていると思っています。飲み会の帰りには子供たちにお菓子を買って帰る、そんな「いい夫」だと…。

「家事もパートも手を抜いて許されるのに、俺は仕事で手を抜いたらクビだ」そう考えながら家に着いた聡は、寝室のベッドに一人寝転び、「男は大変だよ…本当にさ…」とつぶやくのでした。

いい夫・聡は、誕生日パーティーにも帰ってこない…

聡の誕生日当日、妻・紀子（のりこ）は、二人の子供・虎太郎（こたろう）ときららと一緒に聡の帰りを待っていました。部屋には誕生日の手作りの飾り付けをして、聡の好物をたくさん用意していました。

しかし、聡は夜遅くまで帰らず、やっと帰ったと思ったら家で吐き、倒れて寝てしまったのでした。次の日、誕生日パーティーを再度行おうとするも、二日酔いで聡は何も口にできず、パーティーは台無しになってしまいます。

俺が昼飯作ってあげる！手打ちそば！！

翌日、聡が誕生日パーティーのお詫びに手打ちそばをつくると言い始めます。すでに調理を始めていた紀子をキッチンから追い出してしまいました。手打ちそばを満足げに家族にふるまう聡。きららは大喜びですが、虎太郎には不評です。

そんな虎太郎にも気づかず、「俺もなかなかやるだろ！？ちょっとは助けになったかな！」と聡は誇らしげです。しかし、調理後のキッチンはめちゃくちゃ。粉が散乱し、洗い物もそのまま放置されていました…。

無理に決まってるだろ！？そんなもん母親の仕事だろう！！

今日は、虎太郎の三者面談です。聡と紀子は学校で虎太郎の進路について話し合う予定でした。しかし、会社で聡の重大なミスが発覚します。上司には叱咤され、関係者に謝罪の電話をかけ続けていると、紀子から電話がかかってきます。

「うるせぇな…なんだよ仕事中に！！」と聡は思わず大声で怒鳴ってしまいました。そろそろ面談の時間だと紀子が伝えるも、「無理に決まってるだろ！？そんなもん母親の仕事だろう！！」と強く返されます。「俺はな…家族を守ることに必死なんだよ…！！」

突然、紀子に思い出のカフェに呼び出され…

ある日、聡は紀子に呼び出されます。場所は、よくデートで行ったカフェでした。席に着くなり、紀子から差し出されたのは「離婚届」。状況が理解できない聡ですが、そこへ一人の男が現れます。彼の名前は本性寺（ほんしょうじ）。紀子が依頼した離婚弁護士でした。

紀子が本気だと理解した聡は、紀子を責め立てます。「理由がないじゃないか」「酒も女もギャンブルもやらないし、会社ではみんなに“いい夫”って言われてるのに！！」聡はなぜこんなことになったのか全く理解ができません。

もし…結婚生活をやり直せるとしたら…どうしますか？

「…もう…終わったの」紀子はポツリと呟きました。「話し合うことも…助けを求めることも…全部全部やりつくして…、…もう過ぎ去ったの」そう言い残し、紀子は去っていきました。「こんなのおかしい。お願いだ。やり直させてくれ…」聡は訳がわからず、その場で泣き崩れました。

すると、離婚弁護士の本性寺が声をかけます。「もし…結婚生活をやり直せるとしたら…どうしますか？」聡は涙を流しながら、「…決まってるだろ…やり直す。俺は…家族を愛してるんだ…！」と答えます。

その答えを聞くなり、本性寺はこう言いました。「わかりました。お連れしましょう。あなただけの無間地獄へ」その瞬間、聡の体は炎に包まれました。そして、聡が目を覚ますと、ちょうど1ヶ月前の朝に戻っていました—。