誰からも愛されることなく死んだ

「…本当、こんなガキ産むんじゃなかった」レイは両親から虐待を受け、誰からも愛されることなく生きてきました。そして、レイは事故に遭い短い一生の幕を閉じることになります。薄れゆく意識の中、「こんなんで死ぬのか。なにもかもクソみたいな人生だった―…」とレイは思うのでした…。

異世界に転生するが…

目を覚ますと、レイは異世界に転生していました。レイは首に鎖をつけられて、奴隷として扱われてしまいます。さらにレイは声を出せなくなっていました。

「今日入りたて、めずらしいエルフの奴隷だよ！」レイは市場で売られますが、買い手は現れません。「声も出せねえしガリガリに痩せてやがる。欠陥品のクズなんだよ、てめぇは」と奴隷商人に言われ、レイは奴隷商人を睨みつけました。奴隷商人は逆上して、鞭でレイを叩こうとします。

今日からお前は私のものだ

レイは目を閉じ身構えますが、鞭で叩かれませんでした。レイが目を開けると、ドレイクという男が鞭を手で受け止めていました。「この奴隷、私が買おう」ドレイクは奴隷商人の前で金をばらまき、レイを引き取ります。

「今日からお前は私のものだ。精々、私に尽くすことだな」それから、ドレイクはレイの手を取り、自分の屋敷へと連れて行きました。「な…なんでこんなことばっかり―！？」レイは突然の出来事に困惑してしまいます。

温かい食事と笑顔

レイは屋敷につくと、身体を洗われ、服も着替えさせられます。その後、レイの目の前にたくさんの料理が並べられました。「おかしすぎる。こんなの食ったら何が起きるか…」とレイは怪しみます。

そこにドレイクがやって来て、「なんだ食べないのか。飢えた動物のような目をしているくせに」と話します。お腹が空いていたレイは「食わないで死ぬなら、食って死んだほうがマシだ！」と決心して、料理を口にかきこみました。「うめえ！こんなあったけーメシはじめて食った」とレイは感動します。

美味しそうに食べるレイを見たドレイクは、笑みを浮かべて「これも食べてみろ」と果物を手に取りレイの口に運びます。「餌付けされてんのか…？」とレイは思いつつ、果物を口にします。

それを見ていたドレイクの弟のドラコとレヴィがレイに近づき、料理をレイに食べさせようとします。それをレイが食べると、ドレイク、ドラコとレヴィの3人が、競うようにレイに料理を食べさせようとしました。

初めて向けられた優しさ

「―はは…っ」その様子を見たレイは思わず笑ってしまいます。「―おまえ、いま声が―」ドレイクは執事のグレアレンに医者を呼んでくれと頼みました。レイは医者に診てもらい、声が出ないのは心因性のものである可能性が高いと診断されます。

「気に病むことなどなにもない。私がいるのだから」そう言って、ドレイクはレイの頭を撫でます。「…っなんだこいつ、おれを貰うとか言ったくせに、急に優しくして…」そのとき、レイは生まれて初めて他人に優しくされたと思いました。

「まだまだ身体も細い。毎食きちんと食べることだ」ドレイクはレイの身体を気にかけます。それから、ドレイクは街へ出かけるとレイに話して、屋敷を後にしました。

執事の謀略

ドレイクがいなくなった後、レイはグレアレンが「―くそっ、あの乞食、旦那様に気にかけられて…いっそ食事に毒でも混ぜて殺すか」と話しているのを聞いてしまいます。

レイはまさかと思いますが、食事の際にグレアレンが不敵な笑みを浮かべていたので、本当に自分を殺そうとしていると確信します。「ふざけんな！」レイはテーブルに出された料理を床に叩き落としました。料理は床に散乱して、食器も割れてしまいます。

「これは…旦那様が大事にしている食器…よくも…」グレアレンはレイの腕をつかみ、制裁を与えるといって外に連れ出します。

「ここは『まどいの森』土地勘のないお前が戻ってこられることはない。そこで野垂れ死ぬんだな」雨が降る中、レイは見知らぬ地に置いていかれてしまうのでした…。