侍女と王子

シエロ王国の王子・アルヴィンに娶られた侍女・クラリス。ですが、「この国は大丈夫なのかしら…」と王子と侍女の結婚を不安視する国民も中にはいました…。

城外の公務から戻ったクラリスはアルヴィンの手伝いを申し出ますが、アルヴィンは事務仕事を全て済ませていました。「流石ですね。では、お茶のご用意でもしましょうか」クラリスがお茶を淹れようとすると、アルヴィンは引き留めます。「…今日もするか、子作り」アルヴィンはクラリスを寝室へと誘いました。

これが子作り…？

「アルヴィン様…っ、一度休憩しますか…？」「っ…問題ない」アルヴィンは、ベッドの上でクラリスのお腹に魔力を注ぎ込んでいました。この世界では「夫が妻のお腹に魔力を混ぜる」というのが子作りの仕組みです。夜伽は「野蛮な子作りの方法」として扱われ、恋人同士でも体に触れないのが礼儀でした。

「…こうして与え続け1年か…」「はい…そろそろ子が宿ってもいいのですが…すみません…」クラリスはアルヴィンに魔力を注がれ続けていましたが、一向に子供ができる気配がありません。クラリスは心の中で、（いや、こんなんで子供ができるわけなくない？）と思っていました。

2人の出会い

クラリスとして転生する前、父子家庭で弟が4人の長女である主人公は、仕事と家事に追われ疲労で倒れてしまいます。そして、目覚めるとシエロ王国に飛ばされていました。

（えっ…何ここ？夢？）「おい、しっかりしろ」クラリスはそこでアルヴィンに運よく拾ってもらいます。それから、王国の侍女として働いていたクラリスはアルヴィンから突然プロポーズされ、結婚することになったのです。

アルヴィンに1年間魔力を注いでもらっても子供が出来なかったので、クラリスは（転生してきた私の身体がこの仕組みに適してないのかも…）と考えていました。

義母からのプレッシャー

「王子様もさぞお困りでしょうね。妊娠もできない不出来な嫁なんて」国民の中にはクラリスの陰口を叩く者もいました。

「クラリス」「お義母様…！」クラリスは城内でアルヴィンの母親に声をかけられます。「もう1年も経つのに子供ができないだなんて…」義母は、隣国の王女が婚約してすぐに妊娠したことを引き合いに出します。「やっぱり…侍女と結婚なんて失敗だったのかしら」義母は心無い言葉をクラリスに浴びせるのでした。

夜伽をお願いしたいのですっ…！

「今日お義母様に子はまだかと言われてしまって」「…すまない、口出ししないでくれと言ってあるんだが…」クラリスから話を聞き、アルヴィンは謝ります。「やはり子供ができないのは跡継ぎにも関わりますし、その…やはり私では…」クラリスはアルヴィンと離れた方がいいと思いますが、アルヴィンは「離婚などしない」と迷いなく言いました。

（私じゃダメなのに…そんな風に言われたら）クラリスはアルヴィンの役に立ちたいと思います。クラリスは別の子作りの方法として、「夜伽をお願いしたいのですっ…！」とアルヴィンに提案しました。

唇を重ねたら…

「…クラリス…正気か…？」アルヴィンの反応を見て、クラリスはアルヴィンに嫌われたかもしれないと思います。ですが、アルヴィンは悲しんでいるクラリスにそっと手を重ねました。
「！アルヴィン様…！」涙を拭うクラリスを見て、アルヴィンはクラリスを可愛がりたいような、泣かせたいような腹の底が疼く感覚を覚えます。

アルヴィンが頬を赤く染め、「…次はどうする」と聞くと、クラリスは「キス…唇を重ねてみるのはどうでしょうか…」と話しました。（…無意味で不衛生だ。…なんの意味もない）と思いながら、アルヴィンはクラリスにキスをします。ですが、キスをした後、アルヴィンは胸の高鳴りを感じるのでした…。