生まれたときからずっと一緒の幼馴染

人口二千人ほどで子供の数より猫のほうが多く、コンビニも、ファミレスもない、海に囲まれた島。圭と秋人はその島で生まれ、ずっと一緒でした。2人の性格は正反対でしたが、秋人は文句を言いながらもいつも圭の傍にいてくれました。

幽霊の噂

旅館「たまや」の離れには幽霊が住むという噂がありました。幽霊についての噂は色々ありましたが、宿の人間に聞いてもはぐらかされて謎が深まるばかりです。「怖い！！秋人！！もう帰ろう！！」幽霊屋敷の写真を撮るという賭けに負けた圭は、噂の幽霊屋敷まで秋人に付いてきてもらいました。

「本当に幽霊出たらどうするんだよ！？」怖がる圭に対して、「さっさと済ませて帰ろう」と秋人は冷静でした。2人が離れに近づくと、離れから人の声が聞こえてきます。秋人はその声に聞き覚えがありました。「誰だ！！」と離れから声が聞こえ、驚いた圭は秋人を連れて逃げ出してしまいます。結局、声の主の正体は分からずじまいでした。

高校を出た後のこと

翌日、圭がクラスメイトと幽霊屋敷の話で盛り上がっているところ、秋人は先生に呼び出されます。「…先生、昨日岬の幽霊部屋に居ました？」と秋人が先生に聞くと、先生は「いいや、居なかったよ？」と答えました。

「秋人、さっき先生に呼ばれてたのなんだったん？」帰り道、圭が秋人に何があったか聞くと、秋人は一瞬間を置いてから「こないだ模試受けただろ？その結果が良かったって褒められた」と話します。

秋人が圭に高校を出た後のことを聞くと、圭は「あー、親父の船手伝えって言われてるぜ」と返事します。「秋人は？どうすんの？」と圭に逆に聞かれ、秋人は「ん―…まだ…解らない」と歯切れ悪く答えました。

俺は忘れたことない！

夜、秋人は母親に野菜を持っていけと言われ、圭の家を訪れました。「あれってどこだっけ？」幼い頃に秋人と2人で幽霊屋敷のような場所に行った覚えがあると圭が話すと、秋人は「…忘れたのかよ。俺は忘れたことない！」と怒りだしてしまいます。

「おい何怒って―」すると、秋人は圭に突然キスをします。「…ごめん」秋人は切ない表情を浮かべ、そのまま部屋から出て行ってしまいました。

幼い頃の約束

「こわいよ、あきちゃん」「だってボク、けいくんがすきだもん。すきなひととはおやくそくするんだよ」幼い頃、秋人と圭は縁結びの伝説がある岬の洞窟に2人だけで行ったことがありました。そこで2人は壁にお互いの名前を書きましたが、秋人は転んでおでこを怪我してしまいます。

秋人の額にできた傷を見て、圭は夜の洞窟に忍び込んだことを思い出します。圭はそのとき、秋人が居なくなってしまうことが怖くて、泣いてばかりいました。

俺、島から出る

「圭～！！遅刻するよ～！！」翌日、いつも迎えにきてくれていた秋人が家にやって来ません。母親から秋人は先に行ったと聞き、圭は慌てて学校へ向かいました。遅刻ギリギリで学校についた圭は、席にいた秋人と目が合います。しかし、秋人はそっぽを向いてしまいました。その後も圭は声を掛けようとしますが、秋人に避けられてしまいます。

「…秋人…昨日なんであんなことしたんだよ」放課後、秋人と帰りが一緒になった圭は、秋人に昨日のことを聞きます。秋人は「…悪かったよ」と謝り、理由を話しません。「なんでって聞いてるんだ」圭が秋人の腕を掴んで詰め寄ると、秋人は圭に「…俺、島から出る」と告げるのでした…。