『ユサブル』の作品一覧
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桐野さおり
- 夫との結婚三十年記念日のお祝いということで、二人の子供たちから高級ホテルのディナー付きペア宿泊券をもらったとき、主婦・大崎信子(おおさき・のぶこ)はとまどっていた。実はその日、夫に離婚届を突きつけるつもりでいたからだ。見合いで結婚してからこの二十九年間、頼りない夫を支え、尽くし、子供たちを一人前にするためにすべ...
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水城瞳
- 主人公・井上由加(いのうえ・ゆか)は元々資産家の令嬢だったが、母親から束縛された息の詰まるような生活に嫌気がさし、家を飛び出してしがないストリート・ミュージシャンだった今の夫・学(まなぶ)と結婚した。その後娘のみさきも生まれ、貧しいながらもささやかな幸せに包まれた暮らしを送っていたのだが、ある夜、家族で居酒屋で...
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春名宏美
- 高田はしがない万年ひらサラリーマン。夫としても父親としても威厳や存在感がなく、妻と三人の子供たちからも疎んじられ、足蹴にされるような日々を送っていた。そんな彼の唯一の楽しみは、週に一回、安い立ち飲み屋で頼む一杯のビールと一品のつまみだったのだが、ある日そこで知り合った一組の男女から思わぬ話を持ちかけられる。三人...
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上野すばる
- 紺野美也子(こんの・みやこ)は、実母と夫との三人暮らしの主婦だったが、その暮らしは非常に苦しく厳しいものだった。実母は脳梗塞からの認知症を患い寝たきりの生活を強いられたため、美也子はその介護に専念するべく仕事を辞めざるを得なかった。そして夫・精ニ(せいじ)のほうはというと、彼は軽度の知的障害者であり、仕事や日常...
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桐野さおり
- 【平成21年・愛知県】不良文化華やかなりし1980年代、井之口恭平(いのぐち・きょうへい)と片部瑞穂(かたべ・みずほ)は出会い意気投合、ほどなく結婚した。喧嘩もしょっちゅうのやんちゃな恭平だったが、実は実家は地元でも1、2を争う金持ちの『井之口造園』で、時まさにバブルの真っただ中、景気よく恭平の月収は100万円...
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なせもえみ
- 【平成4年・高知県】それは平和な家庭を切り裂く、衝撃の『骨肉の刃』!!――その日、早朝の午前6時50分頃のことだった。住宅街に建つ一戸建て住宅で、この家の次女・春川えりか(13歳)が包丁でメッタ刺しにあい惨殺された。第一発見者であり唯一の目撃者である長女・ゆかり(16歳)の証言によると、いきなり乱入してきた見知...
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小牧成
- 【平成20年・神奈川県】抜けるようなきれいな青空が広がる中、綱島夏美(つなしま・なつみ/33歳)は11階建てマンション最上階の通路から、長男・和馬(かずま/6歳)と次男・人志(ひとし/3歳)を投げ落とし、自らも飛び降り命を絶った。警察は夏美が子供2人を道連れにして無理心中を図ったものとみて、被疑者死亡のまま書類...
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かわしま梨花
- 【平成12年・北海道】愛情にあふれる両親と、わんぱくだけど元気のいい長男・篤志(あつし)と次男・佑太(ゆうた)の兄弟と…それまで上野家は幸せな家庭だった。だが、三男・翼(つばさ)が生まれてから、それも大きく変わってしまった。翼は染色体の異常による障害をかかえたダウン症児だったのだ。しかし、健常児に比べ肉体的に脆...
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かわしま梨花
- 【平成15年・神奈川県】ある夜、山下秀隆(やました・ひでたか/61歳)が帰宅すると、そこには妻・澄子(すみこ/60歳)が左手首と胸を自ら刃物で刺し倒れており、その横で4年間寝たきりだった息子の昇(のぼる/40歳)が人工呼吸器のスイッチを切られすでに死亡していた。昇は路線バスの運転士として働いていたが、35歳のと...
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奈良郁子
- 自分を裏切った夫と離婚し、ひとりで生きていくべく初めての会社勤めに日々奮闘する辻本毬子(つじもと・まりこ)だったが、この頃風邪に似た症状のしつこい体調不良に悩まされていた。小耳に挟んだところによると、今世間を騒がせている感染症『エイズ』の初期症状も風邪に似ているらしい。そのときはさして気にもとめなかった毬子だっ...
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小牧成
- 3年に及ぶ遠距離恋愛期間を経て、ようやく恋人の公次(こうじ)と結婚できた加奈(かな)。さあ、いよいよ待ちに待ったラブラブな日々が始まる!――と思いきや、いざ新婚生活が始まってみると、公次はまったくと言っていいほど加奈のことを抱こうとはしなかった。ええっ、一体なぜ? 仕事で疲れてるから? それとも他に女がいる!?...
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実央マリー
- OLの瞳子(とうこ)はもう長く『痔』に悩み苦しみ、そのおかげで恋人とも別れてしまうという、つらい日々を送ってきた。かつて母も痔に苦しみ、父がそのケアをするという女として耐えがたい様を見てきたこともあって、恥ずかしくて誰にも言えなかったのだ。そんなある日、妹の鮎子(あゆこ)から中島詠一(なかじま・えいいち)という...
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長広洋子
- 岩村里央(いわむら・りお)はごく普通の主婦だったが、若干内向的で自分の思いを相手に正直に言えないところがあった。それゆえか、病弱な娘・千穂(ちほ)の世話や気の強い姑の介護における苦労やストレスを密かに抱え込み、いつしかそれを隠れて酒を飲むことで解消するようになっていく。そんな中、姑が心不全で亡くなり、これで日々...
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長広洋子
- 平山今日子(ひらやま・きょうこ)は病院で主任看護師として働き、日々さまざまな患者と接することで、気苦労と激務からストレスの溜まる暮らしを送っていた。おまけに自らも不妊症の身であり、子供を産めないという女としての負い目を抱えていたが、やさしい夫の朗(ろう)に支えられ、かろうじて頑張れているという現状だった。ところ...
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桐野さおり
- 51歳の高宮留津子(たかみや・るつこ)は、ひと回り年上の真面目でやさしい公務員の夫と二人暮らし。双子の娘二人も結婚して家を出ていき、今は倉庫内荷物仕分けという地味だがストレスの少ないパート勤めをしながら穏やかな日々を送っていた。しかしそんな中、いつしかパート先の上司・岩瀬隼人(いわせ・はやと)のことを愛し始めて...
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桐野さおり
- 小倉多恵子(おぐら・たえこ)は56歳の専業主婦。二人の子供はすでに巣立ち、今は夫・雅之(まさゆき)との二人暮らし。夫は60歳の定年後も会社に引き留められ、今も契約社員としてバリバリ働く仕事のできる男だが、家では縦のものを横にもしない横柄で亭主関白な態度で、たとえ生活に不自由はなくても多恵子は精神的には息詰まるよ...
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宮城朗子
- 主婦・桜(さくら)の70歳になる父親は慢性肝不全を患い入院生活を送っていたが、病状が悪化し肝臓移植をしなければ命が危ない状況に陥ってしまう。三人姉妹の末っ子である桜は、父親に一番なついていたという理由で上二人の姉から肝臓を提供するドナーになるよう促され、自身もそうしてあげたいと願うものの、夫・貴史(たかし)から...
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水城瞳
- 高校2年の息子・智也(ともや)は成績優秀でスポーツもできて、幼い頃から母である主人公にとって自慢の存在だった。ところが最近、そんな息子の様子がおかしい。理由を問い詰めてみると、なんと同級生の少女を妊娠させてしまったという。主人公は驚きながらも、タチの悪い相手にひっかかってしまったのでは…との疑念を抱くが、実際会...
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桐野さおり
- 61歳の主婦・岩本佐和子(いわもと・さわこ)は、人生も後半戦にさしかかったということで、最近”終活”を始めた。身のまわりの余計なもの・不要なものを日々少しずつ処分し、いわゆる”断捨離”していくのだが、なぜか一向に気持ちがスッキリしない…理由は明白だった。佐和子がもっとも断捨離したい存在は夫の博之(69歳)だった...
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小牧成
- 【43歳・介護士の体験】柴田栄子(しばた・えいこ)は、老いた母を満足に世話してあげることもできず他界させてしまったことを後悔し、それをきっかけに介護職を目指しヘルパー2級の資格を取得、40歳にして事務職からの転職を果たした。年長者への深い敬意を胸に少しでも老人たちの力になるべく全力を尽くしたいと施設に勤めた栄子...
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小牧成
- 【30歳・パート主婦の体験】相崎薫(あいざき・かおる/仮名)は建設作業員として働く夫と、息子・稔の3人暮らし。皆から男っぽくドライだと言われるが、それには大きな理由があった。薫の両親は不幸にも二人ともすでに亡くなり、自分では天涯孤独の身だと言っているが、実は6才年上の兄・春樹(はるき)がいて、この兄のせいで両親...
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実央マリー
- 【39歳・専業主婦の体験】私はサラリーマンの夫と小学生の娘の3人家族で、マイホームを購入し新しい土地に引っ越してきました。そこで娘同士が学校で席が隣りだというのが縁で、飯田さんというご近所の奥さんとの交流が始まったのですが、この人がとんでもないクセモノだったのです。飯田さんはご主人は単身赴任中で、娘の紀子ちゃん...
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桜葉幸子
- 【24歳・パート主婦の体験】近所のガソリンスタンドがつぶれ、代わりにコンビニエンスストアができることになり、オープニング・スタッフを募集していた。「オープニング・スタッフなら、みな対等に同時にスタートできる。先輩やベテランに気をつかわなくてもいいからよさそう!」そう思った主婦・中川里花(なかがわ・りか/仮名)は...
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実央マリー
- 【39歳・専業主婦の体験】加藤法子(かとう・のりこ/仮名)は10歳の息子を持つ専業主婦だったが、子育てもひと段落したということで、11年ぶりに働きに出ることにした。新しく勤めた職場ではAグループという班に配属され、そこの布川(ふかわ)という女性リーダーは美人で感じもよく、ホッとする法子。しかし、彼女が自分に向け...
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実央マリー
- 【31歳・教師の体験】私、小笠原薫子(おがさわら・かおるこ/仮名)は今、私立高校で英語教師をしていますが、振り返ってみると自分でも、よくまあ教師という職業を選んだものだと思います。それというのも、私が小3から小6までの4年間、担任だった女教師にとことん苦しめ抜かれた経験があるからです。彼女は黒岩といい、成績、授...
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水城瞳
- 主人公の夫・四郎丸太郎(しろうまる・たろう)はでっぷりと太り、およそカッコよさのかけらもない男だったが、娘の美久(みく)と三人家族、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんな中、太郎は二ヶ月間のタイ出張へと出かけるのだが、期間を終えて戻ってきた夫を見て主人公は度肝を抜かれてしまう。高温の気候や水が合わなかったこ...
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横嶋やよい
- 高校で同じクラスの結子(ゆうこ)と和美(かずみ)は親友同士。結子は中学時代はいじめられっ子で、そのときのイヤな同級生がいない、今のこの遠くにある高校に進学したのだが、そこで出会った和美と妙に気が合い、あっという間に仲良くなったのだ。一方、和美はオカルト好きで心霊や呪いといったものを本気で信じている節があり、「人...
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高条晃
- 恋人・博之(ひろゆき)と結婚することを報告しに、ほぼ10年ぶりに実家を訪れた美奈子(みなこ)だったが、その相変わらずのひどい状況に絶句するばかり…元々横暴な父親の暴力支配に耐え切れず家を出たのだが、それは治まるどころか、2年前から父方の性悪な祖母が一緒に暮らし始めたことによってますますエスカレートし、父と祖母の...
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水城瞳
- 中学教師の菊地涼子(きくち・りょうこ/24歳)は仕事熱心で、テニス部の顧問も精力的に務めるなど評判のよい先生だったが、夏休み明けのある日、可愛がっていた矢田耕平(やだ・こうへい)という生徒とその母親から、性的虐待の被害を訴えられ、学校を辞めざるを得ないはめに追い込まれてしまう。もちろん涼子にはまったく身に覚えが...
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時田かける
- 昭和60(1985)年。神奈川県にある海辺の住宅地で、ある夜、紺野日奈子(こんの・ひなこ)という23歳の若い女性が突然姿を消した。それは、大学時代からの恋人との結婚式を間近に控えて幸せ真っ最中という状況の中、家族も知人もどうにも理解に苦しむ失踪だった。母・恭子、父・照雄、弟・正路、そして婚約者の芳明をはじめ、近...