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小さなお茶会

小さなお茶会
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作品のあらすじ
本書の中にも使われていますが、「時が満ちる」という言葉があります。 「ぷりん」と「もっぷ」という猫の夫婦が紡ぎ出し、多くの人々の心を豊かに満たした不朽のメルヘン『小さなお茶会』は、いろいろな意味で「時が満ちる」ことで結晶した作品です。 少女マンガが、少女をきらびやかに飾るための作品から、少女の、さらには人間の心の揺らぎに沿った作品へと深化していったとき、『小さなお茶会』は誕生しました。 当時、『ぷりん』と「もっぷ」の夫婦が繰り広げる、繊細で、豊かで、優しく、温かく、そして不思議な世界に多くの人が魅了され、癒されました。 また華麗に描きあげられた私たちの宇宙の不思議に慄かされ、驚かされました。 この時、『小さなお茶会』は少女マンガの到達点という、「時を満たした」作品として誕生し、少女マンガの枠を軽やかに超える普遍的な感動を与えてくれました。 そして今、再びこの作品の時が満ちてきました。 私たちはとても生きにくい時代にいます。 どこか窮屈で、孤独で、ともすれば自分自身の時を失いがちです。 そんな索漠とした思いを抱くとき、再びこの作品の輝きが、私たちにおりてきて、豊かに私たちを照らしなおしてくれます。 懐かしく、温かく、時にはぞっとするように……。 初めての方も、再読の方も、「ぷりんともっぷ」の世界の扉を開けれてください。不朽のメルヘンだけが持つ至高の世界が待っています。
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    本書の中にも使われていますが、「時が満ちる」という言葉があります。 「ぷりん」と「もっぷ」という猫の夫婦が紡ぎ出し、多くの人々の心を豊かに満たした不朽のメルヘン『小さなお茶会』は、いろいろな意味で「時が満ちる」ことで結晶した作品です。 少女マンガが、少女をきらびやかに飾るための作品から、少女の、さらには人間の心の揺らぎに沿った作品へと深化していったとき、『小さなお茶会』は誕生しました。 当時、『ぷりん』と「もっぷ」の夫婦が繰り広げる、繊細で、豊かで、優しく、温かく、そして不思議な世界に多くの人が魅了
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    「ぷりん」と「もっぷ」という猫の夫婦が紡ぎ出す世界の扉を開けていただきありがとうございます。 この世界は、暖かさとやさしさに満ちあふれています。 さりげないいたわりと、不思議なものごとへの驚きと、ふとしてきらめく世界の輝かしさが広がっています。 しかし、以上のように形容詞過多な不毛の文章でご紹介するよりも、この世界の案内人には、非常に素晴らしい先達がたくさんおられます。 「小さなお茶会」は読者のそれぞれの人、それぞれの心に多彩な光をあてていて、いろいろな深度でいろいろな世界が照らし出します。 ど
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    生きづらくてしょうがないと思っている世界をなんとか飛び越えようとして、しかも生きるということを輝かしく肯定したいときには、フィクションという表現形式が有効になるのかもしれません。 またさらに、このフィクションの中で、「愛」という一番大切な、しかし危うい営みを、優しく描き切るためにはファンタジーという形式がとてもよく似合うのでしょう。 「ぷりん」と「もっぷ」という猫の夫婦が紡ぎ出す世界は、ごく自然にファンタジーの形をとっています。 しかしこれは当時の少女漫画界にとっては、あまり類例のない、先駆的な冒険
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    「小さなお茶会」は1978年から1987年の間に、『花とゆめ(白泉社)』で連載されました。 猫十字社は同時に『Lala(白泉社)』でも『黒のモンモン組』という、こちらも時代を先取りしたギャグ作品を連載していました。 『小さなお茶会』の作品世界は極めて精緻です。 これをつくり上げるためには、当然、極度の集中力と、尋常でない閃きが前提となります。 また、『黒のモンモン組』はとてもシュールなギャグ作品です。 ギャグ作品は価値観の破壊という側面を持ち、こちらも執筆にはとてつもない破壊と創造のエネルギーを
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    「小さなお茶会」が生まれた幸運は、猫十字社という一人の優れた才能が、1978年から1987年という時代に活動したという事実からも述べることができます。 象徴的な出来事として、今では当たり前になっているコンビニの終夜営業を顧みます。 セブンイレブンが第一号店を開店したのが1974年でした。 そしてその後この店舗形態はあっという間に全国に広まり、1987年には、国内で3000店舗に到達しました。 闇に閉ざされていた夜の街が、全国至る所で光にさらされ始めたのです。 闇は光に侵食され、今までの価値観が大
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    前巻から、巻末に比較的長いページ数のストーリー作品をつけています。 これらの作品群は、主に「小さなお茶会」本編を『花とゆめ』本誌に連載する傍ら、不定期に発行されていた『花とゆめ』増刊号に掲載されたものになります。 本編の『小さなお茶会』のページ数の短さは必然です。 作者は、極度の緊張と集中力で、この短いページに豊かに世界を凝縮しています。 ここで描かれるのは、人が生きることのいろいろな『局面』です。 この『局面』はきらびやかな宝石のように輝いていますが、輝きだけでは描ききれないものがあります。
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    「小さなお茶会」は10年近い長い期間にわたって連載されていましたので、その画風は前半と、後半とでは微妙に変化しています。 植物たちの表現もだいぶ変わっています。 初期の頃は、植物たちの生命力の噴出のままに、植物たちの旺盛な生命力に同化するかのように、あふれるように豊穣な絵柄で描かれていました。 しかしやがて徐々に余剰な線がそぎ落とされていき、本質的な線描が美しいタッチで描かれるようになります。 内容もまた、日常のふとした局面にきらりと光る光を切り取ったものから、時間とか、生とか死とか、より本質的な
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    ここまで「小さなお茶会」にお付き合い頂き、ありがとうございました。 前にも少し触れましたが、この作品が幕を閉じようとしていた時、社会はバブル経済に陥り、人々は大切なことを見失い、狂い始めました。 欲望が際限なく増殖し、『小さなお茶会』が大切に綴ってきた世界の輝きは砕けていきました。 この頃、人々の生活の安定と幸福を担保すると信じられてきた銀行のある頭取は、業務遂行のためには向こう傷を恐れるな、と檄を飛ばしています。 収益が、法や倫理に優先され、倫理観は崩壊しました。 この狂気の影は現代にも影を落