三島由紀夫は東大全共闘に向かって、
「君たちが『天皇』と一言いえば、私はいっしょにやっただろう」と宣言した。
その一年後に、バロン吉元は三島とはまったく違う言葉づかいで、まったく違う文脈において、
あらゆる政治的立場を越えて日本人の正義感に触れる物語を語った。
これは「偉業」と呼ぶにふさわしい達成だ。
全巻解説:内田樹
戦火の足音より速く、少年少女の若き鼓動が走り出す
柳勘太郎、十四歳。満州をはなれ祖国・日本へ。
ぎこちなくも瑞々しい交歓の日々は、とある謀略により一変する。
理不尽・不条理の渦巻く開戦前夜。
ファシズムの躍進、国際的孤立、国家権力による弾圧。
失意の果てに、弔いかさねた少年の夢は、まだ青き大空に吸い込まれていく──。
<収録作品>
「第一章 純情なり」「第二章 多感なり」全16話
<特別収録>
解説「『柔侠伝』にある『時代を超えるもの』」内田樹
年表『昭和柔侠伝』の時代